皆さんこんにちは、「マーケットゲーミング」をご覧いただきありがとうございます。
資産運用と検索をかけると「インデックス」という言葉が出てくると思います。
- インデックスって何?
- なんで多くの人がインデックス投資をおすすめするの?
今回は、こんな悩みや疑問を持っている方々に向けて、金融の世界への理解を少しでも深めていただけたらと思います。
もそもそ、インデックスって何?
インデックスとは、「索引」「指標」という意味があり、業界によって使われる意味合いが変わってきます。金融の世界では、市場全体の動向を示す指標のことをいいます。日本株式市場では、マーケットの動きを表すインデックスとして東証株価指数のTOPIXがあります。
つまり、インデックスとは、特定のセグメントを代表する統計標本なのです。そして、市場動向を分析するのに非常に単純で分かりやすいツールなのです。
インデックスの機能
続いて、インデックスが持つ機能について説明していきます。
市場動向
インデックスは、金融市場の健全性や方向性をリアルタイムで表す機能を持っています。インデックスが上昇している時、市場参加者のうち、買いのポジションを持っている人間の方が、売りのポジションを持っている人間より多くいることを表しています。反対に、インデックス下落がしている場合は、逆のことが起こっています。
ベンチマーク
インデックスは投資パフォーマンスの評価基準やベンチマーク指標として機能します。たとえば、ヘッジファンドなどの大規模な機関投資家やファイナンシャルアドバイザー、個人投資家は、投資パフォーマンスの評価基準として、インデックスよりも上回っているか下回っているかで判断することが多いです。
金融商品
近年では、インデックス連動型の金融商品を利用した新たな投資手法の需要が高まっており、その結果としてインデックスの数は年々増加しています。
後述するインデックス投資は、特定指標に連動することを目的に運用される投資手法になります。上場投資信託であるETF(Exchange Traded Fund)は投資信託でありながら証券取引所で売買することができるという個別銘柄の取引にはないメリットがあります。
しかし、インデックスとインデックス連動型の金融商品の違いを知ることは、インデックスとその派生商品の性質や役割を理解することが重要です。
分析と考察
インデックスは、一般的に認知されている指標であるため、アナリストがトレンドの分析・考察をし、市場参加者のコンセンサスの評価から、投資戦略を立てたりや売買推奨を行うことが多いです。
特に、リアルタイムのデータは、定量的に売買タイミングを計るのにとても役立ちます。
インデックス投資
多くの個人投資家や金融・投資セミナーでおすすめされる投資法に「インデックス投資」というものがあります。
先ほどの説明の中にも書きましたが、特定指標に連動することを目的に運用する投資手法です。
一般の方には馴染みがないかも知れませんが、投資家の間では最も知られた王道の投資手法として知られています。
それは、一時期SNSを騒がせた「運用成績が一番良かったのは亡くなった方である」というツイートの元ネタにも垣間見られます。
今日ノリで行った投資セミナーで一番ためになった資料。 pic.twitter.com/5ZNUUwcwGP— あさこ (@nafco355) January 18, 2020
そして、このツイートの元ネタは以下の通りです。
ブルームバーグラジオのMasters in Businessというプログラムで、ホストであるバリー・リトルホッツ(Barry Ritholtz)と資産管理会社「O’Shaughnessy Asset Management, LLC」の創設者であるジェームズ・オショーネシー(James O’Shaughnessy)の2人が、投資の保有期間の長さについて話し合っていました。
その中で、保有期間の長さに関してジェームズが行ったいくつかの興味深い分析について説明する際に、最近転職してきた社員から聞いた逸話の一部がこのツイートの根拠とされています。
O’Shaughnessy: “Fidelity had done a study as to which accounts had done the best at Fidelity. And what they found was…”
Ritholtz: “They were dead.”
O’Shaughnessy: “…No, that’s close though! They were the accounts of people who forgot they had an account at Fidelity.”
Fidelity Reviewed Which Investors Did Best And What They Found Was Hilarious
フィデリティ社(Fidelity Investments)は、どの口座がフィデリティ社で一番うまくいっているかという調査を行いました。そして、彼らが発見したのは…
亡くなってる人でしょ!
違うけど、それに近い!フィデリティ社に口座を持っていることを忘れていた人たちの口座です。
正確な和訳ではないかもしれませんが、大まかな流れは間違ってないと思います。
ともあれ、リトルホッツ氏が答えた「成績の良いのは『亡くなった人』」という言葉だけが切り取られ、出回ってしまったみたいです。
ここで私が言いたいことは、大きく2つあります。
1つ目は、経済、金融情報を中心とする放送事業を手がけるブルームバーグの人間、つまり金融の世界に精通している人間が「成績の良いのは『亡くなった人』」という認識をしていること。
これに関しては、一般的に「長期・分散を効かせた投資手法」というのが投資の最適解であるという共通認識に基づいた発言であると言えると思います。
そして、2つ目は、資産運用を「忘れていた」人が最も投資パフォーマンスが良かったということです。
「亡くなった人」や「口座を作ったことをそもそも忘れていた人」の共通点の1つには、投資に感情を完全に排除しているということが言えるのではないかと思います。
筆者も、好調だからといって高値掴みしたり、暴落の際に慌てて狼狽売りをしてしまったりと、頭では分かっていても冷静な判断を下せなかった経験はたくさんあります。
つまり、ルールを定めて、律儀に流れ作業のように淡々と売買するのが重要で、感情のままに動いてしまうと負けてしまい、上手くいかないことがほとんどです。
上記の画像は、S&P500(S&P500種指数)と呼ばれる最も大きい指数の1つで、規模、流動性、業種等を選定して選ばれたニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場や登録されている約500銘柄を時価総額で加重平均し指数化したものです。
ご覧の通り、短期的な下落はあるものの、長期的に見ると高騰していることが分かります。
NYダウ(ダウ工業株30種平均)などの他の指数に関しても、過去20年で、多くのインデックスが長期的に上昇していることから、今後も引き続き伸び続けるだろうと考えられています。
これが、インデックス投資は、非常に簡単で投資初心者におすすめの投資だと言われている所以です。
また、チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』やバートン・マルキールの『ウォール街のランダムウォーク』でも指摘されているように、ヘッジファンドの4分の3はインデックスを上回ることができないとされています。時期によって多少の上下はあるとしても、最終的にはそうなるということです。
つまり、手間暇かけて個別銘柄の分析を行ったとしても、インデックスに勝つ勝率は4分の1である。それなら、インデックス投資で十分だというのが、株クラで深く根付いている考え方です。
効率的市場仮説の合理性
これまで話してきたことの背景には、「市場は効率的に機能している」という考えがあります。
しかし、よく考えて欲しいのですが、市場は本当に「効率的」と言えるのでしょうか?
ここでは、市場は効率的であるとする「効率的市場仮説」について考えていきたいと思います。
効率的市場仮説とは、「マーケット参加者が皆合理的に効率性を追求する」という仮定のもと、現在の株価は、将来に対する全ての情報を織り込んだ上で形成されているという考え方です。
まさに、経済学の原点とも言える論理的思考であると言えると思います。
放置されている割安株や極端な高値をつけている株は存在しないことになりますが、なぜこの理論が成り立つとされているのでしょうか?
理論的解釈
まず、理論的解釈から考えていきたいと思います。
この議論の出発点は、1970年にユージン・ファーマ(Eugene F. Fama)が提唱した効率的市場仮説(Efficient Market Hypothesis:EMH)になります。「証券価格は利用可能な情報をいつも完璧に反映している市場」という意味で「効率的な市場」が定義されました。
つまり、その時々に出回っている情報だけで市場平均を上回ることは否定していました。ただし、こうした市場の効率性を支持する理論は、「投資家には、合理的な投資家と非合理的な投資家が存在する。合理的な投資家の行う取引によって、非合理的な投資家は損失を出す。結果的に市場から淘汰され、合意的な投資家のみが市場には残るはずである」というものでした。
しかし近年の、「そもそも人間は合理的ではない」という行動ファイナンス等の研究から、「合理的疑問」が市場の効率性を支持する根拠を大きく揺らがせている。
たしかに、理論が想定する「完全なる効率性」ではないものの、市場がある程度の効率性を持つためには、投資家が掘り出し株やテンバガー(10倍株)探すことが必要条件となります。
全ての市場参加者が「市場が効率的である」という前提で投資行動をしたら、どうなるでしょうか?
株価予測は意味がないと考え、誰もが株価分析や新しいニュース、国際関係を考えるのは非効率であるという考えに帰着すると思います。
なぜなら、そんなことが必要であるならば「すでに市場が織り込んでいるはずだから」。
その結果、市場は新しい情報を織り込まなくなり効率的ではなくなってしまうという「市場の効率性のパラドックス」が起こります。
すなわち、市場の効率性を支えているのは、投資家独自の判断やそれに依拠する売買であって、ただ単に「市場が効率的だ」ということではないのです。
しかし、自らは何も判断せず、市場任せのインデックスに投資するというのは、市場の効率性に基づいたインデックス投資の合理性を弱めてしまう原因になります。最終的に、市場が本来持つ価格調整機能が失いかねません。
効率的市場仮説下での投資行動
それでは、どのような投資行動をすればいいのでしょうか?
結論から言うと、「市場ポートフォリオを組め」ということになります。
簡単に言い換えると、「市場にあるすべての銘柄を、その時価総額の比率に応じた投資が最も効率的な運用手法である」ということです。
世界経済が常に良くなっていくという前提であれば、リスクも軽減されることになるため、市場ポートフォリオで運用することが最も正しい解というわけなのです。
「投資で絶対に勝てる方法は存在しない」と考えるのであれば、市場の平均点を取りに行きましょうというのが、効率的市場仮説における最適な投資行動なのです。
ランダム・ウォーク理論
効率的市場仮説に近い考え方として、「ランダム・ウォーク」と呼ばれる考え方があります。
ランダム・ウォークとは、値動きには規則性が無く、過去の変動とは一切関係ないとする仮説です。
「過去の情報はすべて現在の株価に反映されているため、過去の株価を調べても、未来の株価は常に予測不可能である」ということから、最も効率的なのは、やはりマーケットポートフォリオで運用することだということになります。
あくまで仮説にすぎませんが、資産運用を始める前の筆者が思っていた「投資で買ったのはたまたまでしょ」という考えと同じです。
猿のダーツ投げ
ランダム・ウォーク理論を説明する上で有名な例え話があります。それは「猿のダーツ投げ」です。
バートン・マルキールの『ウォール街のランダムウォーカー』にあった話ですが、「新聞の金融情報欄を壁に張り付け、サルにダーツを投げさせて選んだ銘柄群と、専門家が厳選した銘柄群では、運用成績にほとんど差がなかった」と書かれています。
つまり、高学歴の高給取りのファンドマネージャーに運用を任せるのと、猿にダーツを投げさせて当たった銘柄に投資するのとでは、実は期待値が変わらないというのです。
適応的市場仮説という新しい試み
今日まで、金融の世界では、価格が入手可能な情報を瞬時に反映して効率的に市場が形成されるとする「効率的市場仮説」が強く支持されてきた。
しかし、その常識を覆す新しい学説が登場しました。
それは、アンドリュー・W・ローの「Adaptive Markets 適応的市場仮説」です。
金融学者で自身クオンツファンドに関わる経験もしているアンドリュー・ローですが、実は効率市場仮説を基礎とする「ファイナンス理論」の専門家であります。
そんな彼が、効率市場仮説に異を唱えているのです。
本書では以下のように書かれています。
- 私たちは常に合理的でも、常に非合理的でもない。私たちの意思決定にはバイアスがあるが、過去の経験からヒューリスティックスを見直すことができる。さらに抽象的思考や予測を行うこともできる。金融市場のダイナミクスはこのような参加者たちと(社会や文化を含む)環境の相互作用により形成される。これにより市場参加者の近似的にしか合理的でない行動、完全に非合理な行動も説明できる。
- 効率的市場仮説が正しいなら実践的な投資行動はどうあるべきだろうか。それは「リスクリターンのトレードオフと資本資産価格モデル(CAPM)を認め、自分のとるリスクを定め、それに沿ってポートフォリオを最適化し(その結果は分散化されたロングオンリーのポートフォリオになる)、長期的にパッシブに投資する」ということになる。ここでは市場価格の統計的性質は時間や市場環境によって変わらず、投資家が合理的であり、市場価格は均衡価格になっていることが前提とされている。
適応的市場仮説の本質は、あくまで金融の世界を理解するための新しい枠組みであって、決して「勝つための投資戦略」ではありません。
ただ、各局面に対して、市場参加者は適切な投資行動を求められていることは間違いないと思います。
資産リバランスであろうと、銘柄選定であろうと…
そうやって、市場に投資家が適応していく、その意味で、”適応的”市場仮説の優位性は非常に高いのではないかと私は考えます。
今後、非常に注目の仮説ですね!
まとめ
今回は、インデックス投資の背景について書いてみました。
インデックス投資への理解は深まりましたでしょうか?
理論の裏側まで知ることで、資産運用について少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
本記事が少しでも参考になったら幸いです。
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